日常茶飯の暮らし

仕事と家事の狭間にある有象無象

1泊3日香港 ミュージアムの旅(後編)

前編はこちら

ric650.hatenablog.com

香港2日目にして最終日。九龍地区のミュージアムや劇場を回ります。

香港歴史博物館

常設展改修中のため小さな特別展のみ。今冬の企画は香港公共放送95周年展でした。

 

ポップなネオンが光るエントランス。写真やアーカイブ展示のほか、録音スタジオを再現したスペースに新旧のオーディオ機器から響く声が重なるインスタレーション展示も。

M+

九龍駅南西側にできた西九文化區(芸術・エンタメ施設群)内の現代美術館へ。ウォーターフロントを臨む一等地に数十のギャラリーを擁し、現代アジアの作家の掘り起こしや美術史上に位置付ける活動に力を入れているとか。面白そうな展示が目白押しで、ぜひ繰り返し訪れたい美術館です。今回は虹の芸術家として知られる靉嘔の個展と、水墨画山水画を現代的に解釈した作品を集めた展示を観てきました。

「靉嘔:虹 虹 虹」展

 

日本出身の作家、靉嘔のキャリアを振り返る個展。おなじみの絵画作品以外にも実験的な作品を多く観られる貴重な機会ではないでしょうか。古典を虹を使った表現で再解釈したり、骨格標本などの既製品を虹色に塗ってみたり、スペクトル色の連続性をいじってみたり。平面・立体・空間を自在に行き来しながら、虹の神秘性や親しみやすさといった魅力が提示されていて、見応えのある展示だった。

「山鳴水應」展

 

伝統的な水墨画の表現やモチーフにフォーカスした作品を集めた企画展。水墨画、音響、デザイン、建築作品が並んで、ともすればごった煮のようになりそうなものだけど、作品同士が共鳴しているとでもいうのでしょうか。水墨画の伝統から得た各作品のインスピレーションがぴしっと一つの像を結んでいるようでとても落ち着く空間でした。

正斗粥面專家 圓方店

九龍駅直結のモールでランチ。休日の昼時だけあって混み合っていたけれど、一人客はテーブル席でどんどん相席させるので回転が早い。海老小籠包と海老ワンタン麺いただきました。正統派な味かつお手頃価格のお店。

戲曲中心:茶館劇場

 

今回の旅行一番のお楽しみ。2019年に開館したオペラ劇場、戲曲中心で中国伝統劇「戲曲」を観てきました。長時間のフル上演はハードルが高いので、有名演目のクライマックスシーンを数本集めた初心者向けの90分プログラムへ。

ミニプログラムの舞台は約200席の「茶館劇場」。その名の通り飲茶をお供に戲曲を楽しめる。コロナ流行中は劇場内は飲食不可だったようだけど、今は入場時点で座席横のミニテーブルに点心とお茶が用意されていて、上演中含め好きなタイミングでいただけます。

戲曲中心は今年で開館5周年。開館からほどなくして感染症に振り回され稽古もままならなかった時期を振り返る挨拶にはじまり、管弦打楽器演奏や独唱からなるコンサートパート、広東オペラパートと続きます。ミニ劇場の初心者プログラムと侮るなかれ。豪華絢爛な衣装に、ずらりと並ぶ楽奏隊の煌びやかな演奏は圧巻。舞台上部に英語字幕が流れるので、初見でもストーリーや歌詞を踏まえながら楽しめます。どこかチャーミングな演者の所作にほっこりしたひと時でした。終演後、足早に帰路へ。

お土産、服装

戲曲中心に向かう道中で腰が限界を迎えておりました…… 目に入ったドラッグストアでTIGER BARMの湿布(2枚入り)を買って応急処置。貼った瞬間からビリビリきて、強烈な匂いを纏いながらも何とか急場を凌ぐ。即効性に感動して帰りの空港免税店エリアで温冷両方箱買いしました。今回のお土産はこれだけ。そもそもTIGER BARMはシンガポール物なのだけど…

2月終わりの香港、体感としては湿度高めの日本の春って感じ。日本との寒暖差ゆえアウターの嵩張りが悩ましい。ユニクロのウルトラダウンに寒さ対策のすべてを委ねて軽量化に振り切る。ダウン下はTaoの半袖ワンピースにタートルネックセーターをインナーに仕込み、香港着後はインナー抜いたり薄手のカーディガン羽織って調節していました。足元はエアマックスココに極暖ソックス履いて、機内での快適さと街中での歩きやすさを両立。誰も私のことなど気にしていないの精神で、心地よさに振り切ってます。

所感

旅行記というと、目新しかったこと楽しかったことを書き連ねがち。今回の旅も大きなトラブルなく総じて楽しめたのは幸運だったけれど、実は異国ならではのディスコミュニケーションはそこかしこであって、それもまた私にとって旅の目的の一部だったりします。たとえば、香港2日目の朝食はワゴン式飲茶に挑戦しようと『地球の歩き方』にも掲載されている有名店に突撃したものの、てんで相手にされなかった。どうやって席に座るの?オーダー用紙はどこでもらえるの?他の客を観察していてもよく分からないし、店員さんにたずねても「I don`t know what you say!」と語気強めに一蹴される。地元の人が食卓を囲んで談笑し、そこかしこで料理を求める声があがり、あちこちで出来立ての点心の湯気が沸き立つ中で、ぽつんと立ち尽くす居心地の悪さ。職場でも私的な場でもなじみのメンバーとなじみの会話を繰り返す毎日に少々退屈していた私には、それがとても新鮮で、この旅に意味を付け加えてくれたように思われました。

1泊3日香港 ミュージアムの旅(前編)

春節の余韻が残る早春の香港に行ってきました。長期出張先でロックダウンに突入し慌てて帰国してからまもなく4年。久しぶりの出国かつ初めての訪港です。お買い物や夜景鑑賞はそこそこにミュージアムを駆けずり回った1泊3日でした。

  • HK Express深夜便で香港へ
  • 茶具文物館
  • Vivienne Wesewood Cafe
  • 大館
  • 香港海事博物館
  • Attitude on granvilleに宿泊
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彼方の友へ ーー L'Arc~en~Cielとリスナーコミュニティに育てられた20年を振り返る

音源を聴いてその素晴らしさに鳥肌がたつ。圧巻のライブパフォーマンスを前にして胸がいっぱいになる。こういった出来事は、自分は熱心なリスナーであると自負する人にとってめずらしい出来事ではないだろう。けれど、作り手からの発信を受け取るだけでは満足できないほど好きになってしまったアーティスト、皆さんにもいるのではないでしょうか。音楽学者の井上貴子氏はリスナーの進化系として三つの方向性を提示している。一つは、メンバーに対する(擬似)恋愛感情を抱くというもの。二つ目は、コスプレやコピーバンドといった形で、そのアーティストになりきろうとする「なりたい族 (wannabe)」。三番目は、アーティストに関するあらゆる情報を渇望する「おたく」である。日本国内のCDセールスがピークを迎えた1998年、当時小学校低学年だった私は、すでに国民的バンドになりつつあったL’Arc~en~Cielに心奪われ、以来児童期と前期思春期を進化系リスナーとして文字通りラルク漬けの日々を過ごした。徹底的に作品やアーティストと向き合うこと、人を好きになること、その原体験を得た時期だった。

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